■店長の歴史探訪のはじまりは・・・たぶん明日香が出発点 パームツアーセンターの旅行プランに時々出現する『お祭りシリーズ』 たとえばエチオピアの『ティムカット』、パプアニューギニアの『仮面踊り』 とくに奇祭と呼ばれる祭であったり、素朴な年中行事であったり。 日本のお祭りの中でも、とくに印象深かったのは、奈良県のお祭りの数々。 ・允恭天皇の時代に裁判として行われた熱湯に手を入れて正邪を判断する という盟神探湯(くがたち)に由来する盟神探湯<明日香村豊浦> ・万葉集の歌枕として知られる飛鳥川上流にかかる、男性のシンボルを象った 男綱、女性のシンボルを象った女綱を掛けかえる綱掛神事<明日香村> ・サルタヒコノミコトと目される天狗と、アメノウヅメノミコトと目されるお多福が、 結婚式を挙げ、閨房での夫婦和合まで演じきる奇祭おんだ祭<明日香村> 奈良県高市郡明日香村には、こういった、奇祭と呼べる興味深いお祭りが多数 残されています。 今回、ご紹介するのは、毎年2月の第一日曜日に行われる『おんだ祭』です。 神事は、飛鳥坐神社の境内の舞台で行われます。 ◆おんだ祭◆ 〜 逃げろー 〜 この日の午前、飛鳥坐神社の社務所を出た『翁』と『天狗』は、ささらになった、 竹を持って村中を走り回ります。そして、誰彼かまわず、尻を叩きまくります。 ささらになっているとはいえ、この竹で尻を叩かれるととても痛い! でも、痛ければ痛いほど、縁起がよいのだそうです。魔よけの意味があるとか。 〜 一番太鼓から二番太鼓 〜 やがて、『翁』と『天狗』は飛鳥坐神社に引き揚げます。 一番太鼓が鳴り響くと、まずは神主さんによる儀式が始まります。 祝詞をあげ、五穀豊穣や子孫繁栄を祈ります。 やがて、二番太鼓を合図に、農耕神事が始まるのです。 『翁』と『天狗』は、『牛』に鋤を曳かせて田んぼを耕すしぐさをします。 田んぼを耕したら次は種まき、そして田植え、と進みます。 その間も、『翁』と『天狗』は客席に飛び出さんとするので要注意! 『牛』も独特のしぐさでお客さんを威嚇するからビックリ! 〜 三番太鼓 〜 さて、三番太鼓が鳴り響くと、いよいよお待ちかね、『天狗』と『お多福』の儀式♪ 祝詞をあげて貰い、『翁』が仲立ちとなり、『天狗』と『お多福』は婚礼を挙げます。 婚儀がおわると・・・『天狗』と『お多福』は夫婦和合の神事を始めます。 それがもう、ユーモラスというか、ちょっとリアルというか、見ていて思わず笑って しまうほど、まじめに演じるのです。 やがて、『種つけ?』が終わると、互いに下半身を紙で拭くしぐさをします。 そして、観客に向かって、その紙を投げます。 うまく紙をつかんだ人は、それを持って帰り、閨房で使うと子宝に恵まれるとか。 とにかく、おおらかすぎて、卑猥な感じがしないのがいいですね。 実は、『天狗』も『お多福』も、男性が演じているのだとか・・・ 五穀豊穣と子孫繁栄をセットで願い、祈る、まじめな神事だったのです。 田を耕し、豊作を祈って稲を育て、それを子孫が守ってゆく、願いが込められて いるように感じます。 ■『謎の石造物』を探して 明日香村とその周辺には、まるで用途のわからない、不思議な石造物が いくつもあります。いつ、だれが、なんの目的で・・・なぞは深まるばかりです。 10年以上、前になりますが、明日香村で苑池遺跡が発掘されました。 亀の形をした水盤のような石造物と、石の四角い桶のようなものが発掘され、 今まで謎とされてきた『酒船石』が庭園施設だったのでは?と、新たに調査が 始まったもようです。 今回は、時間が許す限り、飛鳥地方(明日香村や橿原市)に点在する、特異な 石造物を訪れて、謎解きに挑戦します。 ★は入場します。 ☆猿石: 第29代欽明天皇陵の向かい、欽明天皇の孫にあたる吉備女王墓の 墓域に安置された4体の石造物。山王権現として信仰されていた石像で そのうち3体には裏にも顔が彫られています。謎の多い石造物です。 ☆鬼の俎&雪隠: もともとは古墳の石槨。俎石の上に、雪隠石が乗っていました。 このあたりに昔、鬼が棲み、人を捕まえては俎で料理して、雪隠で用足し。 そんな伝説があります。いつの頃か、雪隠石が崖下に滑り落ちたもの。 ☆亀石: 巨大なおむすびのような岩に、まるで亀か蛙のように見える顔が彫られて います。この亀石が西を向くと、大和盆地は泥の海と化すという伝説が。 亀石の腹部には、碁盤の目のような線刻があります。 ★二面石: 橘寺 聖徳太子ゆかりの橘寺の境内にある、世にも不思議な二面石。 2つの顔はそれぞれ善と悪をあらわすといい、背中合せに彫られています。 この石像も、用途不明で謎の多い石造物です。 ☆弥勒石: 飛鳥大仏で名高い飛鳥寺の境内を背に、飛鳥川に向かうと小さなお堂が 見えてきます。その中に立つ、少し前のめりで、口だけが彫られた石仏の ような石造物。もとは条里の境界石だったとも。脚の神様として有名。 ☆マラ石: その名のとおり、男根を思わせる石造物。明日香村のイメージのひとつ、 石舞台古墳の南、祝戸の集落に立っています。これももともとは条里の 境界石だったのでは、と言われています。 ☆酒船石: 水盤のような巨大な一枚石の表面に、幾何学模様の線刻があります。 明日香最大の謎とも言われる、不思議な石造物は、薬や酒を造った石とか あるいは庭園施設の水盤とか言われています。現在は後者の説が有力? ★亀型石造物: 酒船石の北方で発見された苑池遺跡から出土した亀型の石造物および 石盤の遺跡。この2つの石造物と、噴水施設の発掘により、明日香村の 石造物の用途の研究が進んだと言われています。 ☆立石: 明日香村には3つの立石が確認されています。立石は他の地方に伝わる 古代の自然崇拝のものと違い、条里の境界石だったとも言われています。 今回は、最も有名な甘橿坐神社の境内に立つ板石を訪れます。 ★豊浦文様石=須弥山石破片: 広厳寺(豊浦寺址) 飛鳥資料館に安置されている重要文化財の須弥山石。現在は三層が確認 される噴水施設ですが、その紛失したもうひとつの層の一部かと言われる 文様のある石造物です。 ☆ほかにも 時間が許せば、高松塚古墳/石舞台古墳/岡寺も立寄ります。 <テーマ1: 明日香村などに点在する不思議な石造物を訪れて・・・> <テーマ2: おんだ祭に参加して・・・>