バルセロナ カサ・ミラ(©立花明日香) 【カタルーニャ】 独立問題に揺れたカタルーニャ地方の主邑がバルセロナです。 カタルーニャ州の州都であり、バルセロナ県の県都でもあります。 カタルーニャ随一の都市であり、スペイン第二の都市でもあります。 カタルーニャは古くから独立意識が高く、スペインの一部という 位置づけに甘んじることをよしとせず、ジャナラリターという政府の もとで、自治政府を築き、過去5回、独立が宣言されました。 独立宣言の度に、“カタルーニャ共和国”という名が使われました。 以下は、カタルーニャの独立運動の歴史です。 ◆1641年(日本は寛永18年。女性天皇であった明正天皇の御代。江戸幕府第三代将軍・ 徳川家光の治世)1月17日、スペイン中央政府と決別したカタルーニャは、カタルーニャ 共和国の成立を宣言。その一週間後にはフェリペ4世軍が侵攻してきました。当時の カタルーニャの長であったパウ・クラリスは、フランスに帰属することを決定しました。 同年1月26日、モンジュイックの戦いで、カタルーニャ=フランス連合軍はスペイン軍に 勝利し、フランス軍を撤退させますが、その一か月後にクラリスは急死、スペイン軍と フランス軍の戦いはピレネー山脈の争奪戦の様相を呈し、カタルーニャは戦場となり、 疲弊します。1652年(日本は慶安5年。後光明天皇の御代。江戸幕府第四代将軍・徳川 家綱の治世)、飢餓と疫病に苛まれたカタルーニャは、スペイン軍の手に落ちます。 ◆1873年(明治6年)、バルセロナ出身の政治家ニスラウ・フィゲーラスがスペイン共和国 初代大統領に就任。フィゲーラスは出身地であるカタルーニャの独立を宣言しますが、 非公式なスペイン連邦内での一方的な独立宣言、しかも大統領による独立宣言である ため、世情は大いに混乱します。結局、カタルーニャに対して軍隊の解散が約束されて 事態は収拾され、フィゲーラスは同年6月に退任し、フランスへ亡命しました。同年末に フィゲーラスはフランスにあって連邦党の立て直しを図りますが、失敗しました。 ◆1931年(昭和6年)4月の地方選挙の結果により、アルフォンソ13世が退位しましたが、 それは躍進する形共和主義左翼を勢いづけ、同党の党首フランセスク・マシアーは、 バルセロナのジャナラリター宮殿バルコニーで、イベリア連邦内でのカタルーニャ 共和国成立を宣言しました。しかし、この独立宣言はスペイン第二共和制暫定政権を 刺激し、結果、連邦制度内でのカタルーニャの独立は撤回を余儀なくされます。その かわり、自治政府としてのジャナラリターの復活が認められました。 ◆1934年(昭和9年)、アストゥリアス州で起きた左派革命と同じ時期、10月6日、新たに ジャナラリター首班となったリュイス・クンパンチが、スペイン連邦共和国内での国家 樹立を宣言しました。しかし、中央政府は軍を派遣し、鎮圧しました。クンパンチは、 逮捕され、30年の懲役刑を宣告されましたが、1936年(昭和11年)の選挙で、左派の 人民戦線が勝利したため、釈放されます。しかしの スペイン内戦後、フランシスコ・フランコ政権はジャナラリターを停止させ、自治政府は 亡命しました。フランスに亡命していたクンパンチは、ゲシュタポにより逮捕されて、 スペインに送還され、合法ではない軍事裁判にかけられ、1940年8昭和15年)10月15日、 1936年から1939年(昭和14年)、モンジュイック城で銃殺されました。 ◆2010年代にはいると、カタルーニャ自治州では、独立の機運が高まります。2014年 11月9日の独立住民投票で賛成多数となり、2015年9月27日に投開票された自治州 議会選挙でも独立賛成派が過半数を獲得し、同年11月9日にカタルーニャ州議会は、 向こう18ヶ月以内に独立宣言するという、カタルーニャ独立手続開始宣言を採択。 2017年10月1日の独立住民投票で賛成多数となったことで、カルラス・プッチダモン カタルーニャ州首相らが独立宣言に署名しました。しかし、中央政府との対話を模索 するために、独立宣言は凍結、保留状態に置かれました。その後、スペイン中央政府は スペイン憲法155条に法り、自治権停止措置発動の方針を打ち出したため、10月27日 自治州議会は独立宣言を賛成多数で可決しました。これを受けてスペイン中央政府は 議会上院の承認を受け、自治権停止措置を発動させ、プッチダモン首相を首班とする 自治政府”閣僚”を解任に、中央政府による直接統治に乗り出し、プッチダモン前首相を 国家反逆罪および扇動罪で起訴しました。 【芸術の都バルセロナ】 自立心の強いカタルーニャは、また、バルセロナは、独特の文化を育んできました。 建築の分野では、アントニ・ガウディ、リュイス・ドゥメナク・イ・ムンタネー、ジュゼップ・ プッチ・イ・カダファルクが活躍し、特にガウディはサグラダファミリア教会を中心に、 前衛的なデザインの建築を確立させました。 美術の分野では、ジョアン・ミロ、サルバトール・ダリの二人が名声を高めました。 また、マラガ出身のパブロ・ピカソに大いに影響を与え、傑作を生みました。 今回の旅では、バルセロナ市内に点在する、アントニ・ガウディの建築群を訪れます。 アントニ・ガウディは1852年(日本は嘉永4~5年。孝明天皇の御代。江戸幕府第十二代 将軍・徳川家慶の治世)6月25日にカタルーニャのタラゴナ県で誕生しました。 彼の出生地はレウスとも、レウス近郊のリウドムスともいわれています。 1873年(明治6年)から1877年(明治10年)の間、ガウディはバルセロナで建築を学び、 1878年(明治11年)には建築士の資格を取ります。 ガウディが最初に手掛けた建築は1867年(日本は慶応3年。明治天皇の御代。江戸幕府 第十五代将軍・徳川慶喜の治世~王政復古)の産業コロニアであると言われています。 建築士の資格を取ったガウディの最初の仕事は、パリ万国博覧会(1878)に出展する クメーリャ手袋店のショーケースのデザインで、この作品を見てガウディの才能を 見染めた繊維会社経営者で富豪のエウセビオ・グエルで、以降40年あまり、グエルは ガウディを支援することとなります。 ガウディの才能はグエルの支援で開花し、数多くの作品をカタルーニャに残しました。 1883年(明治16年)サグラダファミリア教会の専任宮大工に推挙されたガウディは、 サグラダファミリア教会の建立に心血を注ぎます。後半生の彼は、敬虔なカトリックの 信徒となり、宗教関係の建築のみ請け負っていました。しかし、ガウディの周辺の人々の 相次ぐ逝去、バルセロナの財政危機によるサグラダファミリア建設の停滞、同時進行の コロニア・グエル教会堂の建設工事の中止み見舞われ、さらにガウディを支援していた エウセビオ・グエルの死が重なります。 1926年(大正15~昭和元年)6月7日、ミサに向かをおうとしたガウディは、路面電車に 轢かれ、3日後にその生涯を閉じました。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★①ベリェスグアルド ・場所: Bellesguard 16-20 ・着工: 1909年 ・竣工: 1919年 ・特徴: 別名『フィゲーラス邸』。ガウディの信奉者であったフィゲーラス夫人の屋敷。 建物はネオ・ゴシック様式。かつての城の廃墟も巧みに取り込んだ建築物 ・見学: 05~10月 月~土 10:00~19:00 11~04月 火~日 10:00~15:00 ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★②グエル公園 ・場所: バルセロナ市街 北東部 ・着工: 1900年 ・竣工: 1914年 ・特徴: 世界文化遺産。 ガウディのスポンサーだったグエル。バルセロナ市街を見下ろす丘の上に 60戸からなる宅地を造成しようと計画。ガウディや彼の弟子ジュジョールに よって建設が始まるが、頓挫。しかし現在は公園として愛されている。 ・見学: 05月上旬~08月下旬 毎日 08:00~21:30 10月下旬~03月下旬 毎日 08:30~18:15 上記以外の時期 毎日 08:00~20:00 ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★③サンタ・テレサ学院 ・場所: Ganduer 91 ・着工: 1888年 ・竣工: 1890年 ・特徴: 女子のカトリック教育を目的とする、サンタ・テレサ会の本部。前任の建築家から ガウディが引き継いで完成させたことで知られている。予算が限られていたため、 前任者が使用していた煉瓦をそのまま使いムデハル様式で完成させた。 ・見学: 敷地外からの見学に限る。内部拝観不可。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★④ミラーリェス邸の石門 ・場所: Passeig de Manuel Girona y Carrer de Benet Mateu ・着工: 1898年 ・竣工: 1900年 ・特徴: グエル別邸に近い団地の入り口にある、奇抜なデザインの石門。ガウディの支援者である グエルの友人ミラーリェスが、グエルからこのあたりの土地を購入し、屋敷を建てました。 石門はガウディが設計、屋敷はガウディの弟子スグラーニェスが設計。石門のみが残ります。 ・見学: 見学自由。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑤グエル別邸 ・場所: Av.Pedralbes7 ・着工: 1884年 ・竣工: 1887年 ・特徴: 世界文化遺産。 ガウディのスポンサーだったグエルのために行った初仕事がグエル別邸の設計でした。 グエル別邸の正門『竜の門』、『厩舎』、『門番小屋』が現存しています。 ・見学: 毎日10:00~16:00 ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑥グエル邸 ・場所: Nou de la Rambla 3-5 ・着工: 1886年 ・竣工: 1890年 ・特徴: 世界文化遺産 ガウディが設計した、彼の支援者グエルの屋敷です。ファサードの金属の彫刻がみごと。 内部は天井が高く、吹き抜けが心地よい空間を作り出しています。屋上にはガウディらしい 奇抜な飾りが立ち並んでいます。光と影さえもインテリアにした傑作中の傑作です。 ・見学: 火~日 10:00~20:00(11~03月は10:00~17:30) ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑦カサ・カルベット ・場所: Casp 48 ・着工: 1898年 ・竣工: 1900年 ・特徴: 地上5階/地下1階の建物で、第一回バルセロナ建築年間賞を受賞した建物です。最高級の 石材で建てられており、ファサードはその素材感が活かされています。現在、1階はレストラン で、伝統的なカタルーニャ料理が食べられます。 ・見学: 外観のみ見学自由。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑧ロベルト博士のモニュメント ・場所: Pl.de Tetuan,s/n ・着工: 1904年 ・竣工: 1910年 ・特徴: テトゥアン広場に建つモニュメントで、ガウディの設計をもとにジョセプ・リモーナという ガウディと親しい彫刻家が制作しました。バルセロナの市長を務めた医学者/政治家の ロベルト博士を顕彰するモニュメントです。 ・見学: 見学自由。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑨カサ・バトリョ ・場所: Pg.de Gracia 43 ・着工: 1904年 ・竣工: 1906年 ・特徴: 世界文化遺産 繊維業者ジョゼップ・バッリョ・カザノバスの依頼でガウディが改築を請け負った建物です。 バトリョはカタルーニャ語では、バッリョと発音します。平面のファサードに、曲線を描いた 立体的なバルコニーが配され、館内にはガウディが設計した長椅子と机があります。 ・見学: 毎日 09:00~21:00 ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑩カサ・ミラ ・場所: Provenca 261 ・着工: 1906年 ・竣工: 1910年 ・特徴: 世界文化遺産 【石切り場】という愛称を持つ、奇想天外なデザインの建物は、サグラダファミリアと並び、 バルセロナの象徴のひとつとなっています。直線をまったく持たない建物で、建築物と いうよりは、彫刻と呼ぶにふさわしい芸術的な文化財です。 ・見学: 毎日 09:00~20:30(11月上旬~02月下旬 09:00~18:30) ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑪カサ・ビセンス ・場所: Carolines 24 ・着工: 1883年 ・竣工: 1885年 ・特徴: 世界文化遺産 レンガやタイル工場を経営するマヌエル・ビセンスの自宅として建設された、ガウディ初期の 作品です。えんじ色の建物に、白い装飾を合わせた外観が印象的です。イスラム建築様式を 取り入れたムデハル様式の影響を受けていると考えられます。 ・見学: 外観のみ見学自由。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ★⑫サグラダ・ファミリア聖堂 ・場所: Mallorca 401 ・着工: 1882年 ・竣工: 未完成 ・特徴: 世界文化遺産 未完成の大聖堂。ガウディはこの聖堂の専任の宮大工に推挙され、設計を手がけました。 家族贖罪教会という位置づけのもと、喜捨/お布施により、建設が賄われているという 特徴があります。かつては完成に300年はかかると言われていました。 ・見学: 毎日 09:00~20:00(11~02月 09:00~18:00 03&10月 09:00~10:00) ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ・番外編 (コロニア・グエル教会) ・場所: バルセロナ市街から北西へ20㎞ ・着工: 1908年 ・竣工: 1914年 ・特徴: 世界文化遺産 ・見学: 月~金 10:00~17:00(05~10月は10:00~19:00) 土日祝 10:00~15:00 ※上記以外にも特別拝観日/特別休館日もあります。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ・番外編 (レイアール広場の街灯 ・場所: レイアール広場 ・着工: 1878年 ・竣工: 1879年 ・特徴: ガウディ最初の作品 ・見学: 自由